オンコールっていうのは、病院からの呼び出しに応じられるように、待機を命じられることで、
コールから15分以内に病院にかけつけなくてはならない規則だ。
緊急オペになることもあるため、当然お酒は禁止。
もっとも、飲酒運転が法的に禁止されていても、それを破る交通担当の警察官や学校の教師がいるように、
お酒の匂いをさせながら、オンコールに対応する医者もいるのだが。
「そういう夏夜こそ、お酒は飲まないの?」
私の前に置かれたオレンジジュースを見て、仲地は、俺のことは気にしなくていいけど、と笑った。
「私は、あまり強くないし、手術してからまだひと月ですから」
別に、仲地に合わせてノンアルコールにしたわけではない。
本当は、酔っ払ってしまいたかった。
酔っ払って、現実をすべてどこか遠いところへ追いやってしまいたい。
けど、それをしたところで、その借金は必ず自分の身に降りかかってくる。
後々の事を考えれば、そういう風に自分を捨てきる勇気も、私にはなかった。
いらいらして、部屋の中をめちゃくちゃにひっかきまわしたい気分になっても、
その後の片付けの事を考えたら、それを実行できないのと同じ原理だ。

