「あっ!海東先生!
お疲れ様です」
出口を出たところで、初老の男性にぶつかった。
初老といっても、髪がほぼ白髪ってだけで、身長が180センチ近くもあり、体格のいい海東は、
病院の中でも、女性陣から、素敵なおじさま先生と大人気だ。
海東は、この病院の中では、私がもっとも信頼している医師で、
病気のときは、必ず彼に診察をお願いしていた。
年齢と腕からいくと、院長になっててもおかしくはないのだが、
なぜか内科の一般外来と、緩和ケア病棟を担当している。
緩和ケアっていうのは、すでに病にうつべき有効な手段がなく、
なるべく苦痛を和らげて死を迎えるためのもので、
今でこそ一般的になってきたが、なりたがる医師はいない。
医者は、病気を治すのが仕事で、
死を看取るなんてのは、くだらない仕事だって思う医者が多いんだろう。
もちろん緩和ケアにもいろいろあって、亡くなる患者さんだけを診る訳ではないんだけど、
それでも医者の受けはあまりよくない。
そんな仕事に、10年以上も前から取り組んでいる海東に、
私は尊敬の念を抱いていた。

