「ちょっ、待ってください!」
連行されるもんか、と両足で踏ん張る。
「夕飯、もう食べたの?」
「いえ、まだですけど」
食事の話になって、急にお腹がすいてきたような気になる。
「誰かと約束でも」
「いいえ・・・。でも私、そんなにお金持ってなくて」
財布の中には万札が3枚あったが、この先を考えればなるべく使いたくはない。
「誘ったんだから、奢ってあげるよ。行こう」
我ながら、情けないと思う。
奢ってあげるよ、の一言で、心がぐらりと傾いだ。
ただより高いものはないって、ちゃんと人生の中で勉強してきたはずなのに。
「何が食べたい?」
仲地は、満面の笑みだ。
思わず、なんでもいいです、と返事をしてしまった。

