白衣をまとっていないところを見ると、仲地は、どうやら帰るところらしい。
「こんばんは。お疲れ様です」
当たりさわりの無い事を言って、とりあえずこの場を去りたい。
急いでいるので、失礼します、と言って横を通り抜けようとすると、
腕を掴まれた。
そうなるんじゃないかと思って、距離をとったのに、
まるでチーターに襲われたんじゃないかってくらいの、スピードだ。
「外来はとっくに終わってるはずだけど、どこに行くの?」
「と、当直で」
「藤崎さんの当直は4日でしょ。今日は違うはずだよ」
私が嘘をついていると、自信があるんだろう。
仲地は、にっこりと笑って、私の手を引いた。
「お腹すいてるんだ。夕飯付き合ってよ」
私の返事もきかず、仲地は歩き始めた。
私の体が、刑事に連れて行かれる犯罪者のように、
ずるずると引きずられる。

