ただ一つだけ、計算できないことといえば、仲地は、私を痴漢から救った人間であるということだ。
正義感からか、好奇心からか、それともまさか・・・。
こうやって、脅しをかけてくるところを見れば、前者ではないのだろう。
どうしても、この男がどこまで知っているのかを、確認しなくてはならない。
「あぁ、この間はありがとう。
おかげで、いい論文が書けそうだよ」
でも、と言って、仲地は口元に冷笑を浮かべる。
「俺が興味あるのは、夏夜が探しているカルテのほうなんだけど」
「何のことでしょうか」
仲地は、おもしろそうに瞳を輝かせて、
病棟のクラークさんに聞いたんだけどね、と笑った。
「現在この病院にかかっている人の記録なら、わざわざカルテ庫までこなくても、いいんだってね。
自動で出庫できるらしいじゃないか。
オンラインで記録を引っ張り出すことも可能だしね。
それを、わざわざカルテ庫まで来るってことは、現在はかかっていない人間の、
しかも古い記録がほしい、ってわけだ」

