「先生。カルテが必要なら、昼間おっしゃってください。
私は、カルテを管理しているわけじゃないんです。
5時半を回れば、カルテ庫の管理は、救急外来の担当になります。
急ぎでなければ、日中、ちゃんとカルテ庫を担当するものにおっしゃってください」
まずは、とぼけてみた。
仲地が何を考えているかわからないけれど、私には少なからず勝算があった。
それは、彼らのように地位や名誉を手にしているものは、
わざわざ厄介ごとに首を突っ込みたがらない性質を持っているって事を、
私はよく知っているからだ。
たとえ、私が本当に犯罪を犯しているところを見つけても、
(つまり、勝手にカルテを持ち出したところを見ても)
彼らは見てみぬふりをするのではないか、そう考えているからだ。
電車から降りて具合の悪くなった私に、誰も手を差し伸べなかったように・・。
しかも、今回は、何の証拠もない。
私は、カルテを持ち出したわけではなく、探していただけだ。
この前は、焦っていて思わず仲地にのせられたけど
冷静になって考えれば、私を非難するどんな物的証拠もないのだ。
仲地に頼まれてカルテを探していたことは、彼がQ外に電話したことで、
証明されるはずで、
逆に、仲地にセクハラをされたと私が騒げば、
辞めさせられるのが私であるにしろ、彼だって少しは困るはずなのだ。

