「携帯電話はお持ちでないですか?」
里佳子の声に、看護師が、ないです、とのろのろと答える。
「あの、とりあえず、ご自宅に電話して、ご家族がいれば、
普段どこの薬局によっているか、確認してください。
私たちは、手分けして近所の薬局さんに電話しますから」
私の緊迫した声を聞いて、彼女は、ますます泣きそうな声を出した。
「あの、でも診察室の方も手が足りなくて・・」
そんなこと言われても、受付だって無人にするわけにはいかない。
タイミングの悪いことに、受付に、すみません、と声がかかった。
とりあえず、里佳子が、はい、と答えて対応を始める。
お昼交代の時間は、どこでも人手が足りない。
そもそもが、ぎりぎりの人数で回しているから、仕方がないが。
「ちょっと大森さん!診察室ほったらかして、なにやってんの!
先生が呼んでるでしょ!」
彼女を指導している看護師が、鬼のような形相で受付に寄ってきた。

