鈍感と言われる私でも、その言葉と晃の真剣な顔を見て何を言っていたのかは理解した。


「…え、でも」

いきなりの事になんと返していいか戸惑う。

「…それとも、俺に不満とかある?」

フッと笑いを浮かべて彼は問う。

晃に不満?

優しさが欠けている以外完璧だと自分で言えるような彼に?

彼が余裕の笑みを浮かべながら私に尋ねた理由は察しがついた。


そんなのあるわけないじゃん。

毎年花火大会は女友達と来ていたのに、今日の昼かかってきた電話で晃の誘いを受けた事。

浴衣なんて動きにくいから着なかったのに今年はそんなのおかまいなしに着てきた事。


これらの理由なんてちょっと考えればすぐに分かったんだ。


「不満なんてないよ。」

言いながら晃に笑いかけた。

「そう、じゃあ店空いてきたし林檎飴でも買いに行くか。」

晃が動き出したのと同時に夜空に光の花が咲いた。

「キレイー。」

「‥おい、置いていくぞ。」

「ちょっと待って!!」

私は慌てて彼を追いかける。

彼は今度は私の前を歩かずに私の歩調に合わせて隣を歩いてくれた。

「俺らは二人で完璧なんだ。」

そう言ってまたフッと笑う。


彼の左手にある袋には相変わらず黒と赤の金魚がいた。

姿形の違うその二匹は寄り添うように泳いでいる。


まるで、二匹で一つなんだと言わんばかりに。




end.