冷たい地面の上に横にな
って、お母さんは静かに
息をしていた。


あたしはそれを、瞬きす
らしないで、じっと見つ
めていた。


お母さんは最期の時にな
っても、にこりとも笑い
はしないの。


薄汚れた、薄い毛布と…
むせ返るような埃っぽい
空気がお母さんの最期を
飾る演出だなんて。


あたし達の周りに、たく
さん人はいるけれど、誰
も死にゆくあたしの母親
に目もくれないわ。


それが普通になってしま
ったの。あたしたちは。


ここに収容されてしまっ
てから何年経ったのか?
昔あった強制収容所…そ
れがまさか、現代に蘇っ
てしまうなんて。思って
もいないじゃん。