そうして、医師の
診察を受けられた
貴悠さまは、
医師より、ご懐妊を
告げられたので、
ございます。

「…ご…かい…に…ん」

貴悠さまは、いまだ、
信じられないという風で、
ご自分の腹部を
さすっておられます。

「姫さ…いえ、お方様!
ご懐妊、まことに
おめでとうございまする」

私が、そう申しますと、
貴悠さまは、私に
「お方様…?」と、
お尋ねになられました。

「はい。お方さまは、
岩鞍殿との間に、やや様を
もうけられました。
もう立派に、名実ともに
お方さまになられました。」

「お方…さま。お母様…。」

「はい、お方さまは、
お母様にもおなりです。」
「ばあや、ややは、
いつ頃、私のお腹から
出てくるのですか?」

「今、2ヶ月程です故、
あと8ヶ月程で、
ございましょうか」

「8ヶ月…?まぁ、
ややとは、すぐに
会えないのですか。」

貴悠さまは、残念だと
いう表情をされる。

なんと世間知らずな…
と、思われるやも
しれませぬが、私に
とりましては、幾つに
おなりになっても、
お方さまにおなりでも、
お母様におなりでも、
お方さまは、私が仕える
可愛い姫さまなのです。

「お方さま、大丈夫で
ございますよ。これから、
私が、やや様のこと、
一からお教え致しまする。
とにかく、このこと、
岩鞍殿にご報告せねば
なりませぬ。私は、
殿にご報告して
参ります故、
しばし、お床で
お休みなさいませ。
誰かある!お方さまの
お床の支度をせよ」

貴悠さまに、休むよう
進言し、侍女たちに、
お床の支度をさせた私は、
岩鞍殿の元に参りました。