涼村さんは、一杯一杯の仕
事をする女の子だった。

ある日、俺は何気なく、涼
村さんに、
「がんばれ」と言った。

そしたら、
「これ以上、どうがんばる
のですか」と返され、苦笑
するしかなかった。

数日後、俺は、涼村さんに
こう言った。

「あまり、がんばり過ぎず
に、たまには休んだら」

そしたら、
「私は、負けず嫌いですか
ら」と返され、ひきつった
笑いを返すしかなかった。

そして、また数日後、俺は
涼村さんに言った。

「負けるな」と…そう言う
しかなかった。

「もう負けそうですよ。私
は、かなり強いつもりでし
たけど」と言って、薄く笑
った涼村さんを見て、俺の
心は揺れた。