涼村さんは、21才。

高卒で入社して、すぐに工
務課に配属され、3年目を
向かえていた。

ある日、俺は涼村さんと一
緒に、即日出荷すべき製品
が、完成しているかの確認
のために、製造部署に行っ
た。

無事完成していることを確
認すると、涼村さんは、

「私、この製品が、お店に
並んでいるのを見ると、う
れしくなるんです」と言っ
て、薄く笑ってから、

「愛社精神がありますから
!」と、冗談っぽく付け加
えた。

俺は、忘れていた。この感
覚を、ずっと…。

日々、効率優先の職場で、
上司からの指示や、他部署
との確執に謀殺されていた
俺は、この一番大切にすべ
き気持ちを忘れていた。

『製品を買ってくれるお客
様に、より良い製品を届け
る』ことを…。

俺は、涼村さんの若さが眩
しかった。