蝶々結び

祖母の言った通り、夕食は本当にご馳走だった。


生野菜サラダ、お刺身、ちらし寿司、煮物、茶碗蒸し、お吸い物…。


食卓の上には、次から次へと料理が出て来る。


「これは、さっき畑で採ったばっかりなんやで。こっちの刺身は、今朝市場で買って来たんや」


食事中、祖父は嬉しそうに話してくれた。


あたしと母が『美味しい』と褒める度に、祖母も嬉しそうに笑っていた。


「ここは昔から変わらんね」


母はビールを飲みながら、祖父母と昔話を始めた。


「そんな事ないで。お父ちゃんの子供の頃と比べたら、今とは全く違うからな」


「そんな昔の事なんかわからんわ」


祖父の話に、母が楽しそうにツッコミを入れた。


「まぁ、そやな……」


祖父はほんの少しだけ寂しそうに笑って、グラスのビールを飲み干した。