蝶々結び

「七星、玄関で奈津子(ナツコ)が呼んでるで!」


あたしの後ろから来た祖父が、そう言った。


「お母さんが?あっ、荷物だ!」


あたしは、急いで玄関に荷物を取りに行った。


「ほら、七星」


「ありがとう!」


母が下ろしてくれた荷物を持って、居間に戻った。


「今日はご馳走やで!」


「ほんまに!?ここに来たらお母さんのご飯食べられるし、極楽やわ〜!」


母は扇風機の風に当たりながら、祖母の顔を見た。


祖母は、優しい笑顔を返した。


普段は標準語で話す母だけど、田舎に来ると関西弁になる。


母曰(イワ)く、『結婚して今の家で暮らし始めたら関西弁が抜けた』らしい。


だけど…


楽しそうに関西弁で話す母を見ていると、やっぱり母は関西人なんだと実感する。