蝶々結び

怒ろうと思ったのに、そんな風に謝られてしまうと困る。


「もう、イイです……」


渋々そう言って、ため息をついた。


「ごめんな?」


上杉先生は顔を上げて、もう一度謝った。


先生の一生懸命さに、フッと笑みが零れる。


「フッ……!クックッ……」


堪え切れなくなったあたしは、お腹を抱えて笑い出した。


「え……?どうした?」


「だって、先生っ……一生懸命過ぎて……まるで子供みたい……っ!」


笑い過ぎて、上手く話せない。


そんな自分が、余計に可笑しく思えた。


物心ついてからこんなにくだらない事で笑ったのは、きっと初めてだと思う。


「お前な〜、人が真剣なのにそんなに笑うなよな!」


上杉先生には、そう言われたけど…


あたしはしばらくの間、この笑いを止める事が出来なかった。