蝶々結び

帰りの車の中では、さっきの話題に触れられる事は無かったけど…


恥ずかしさが消えなくて、何となく落ち着かなかった。


「このままちょっと寄りたい所があるんだけど……。時間、大丈夫か?」


「うん。親には先生と一緒だって事も、創太に会う事も言ってあるから」


笑顔で答えると、上杉先生が微笑みながら頷いた。


「そういえば……お前、俺との事言った?」


「誰に?」


「誰って……。親にだよ……」


気まずそうにしている上杉先生の横顔を前に、思わず小さな笑みを浮かべる。


「お母さんには言ったよ」


あたしがそう言うと、先生は苦笑した。


卒業式の日に上杉先生と会えたあたしは、家に帰ってから母にその事を少しだけ話した。


母にこんな事を話すのは照れ臭かったけど、あたしの事をずっと心配してくれていたから…。