蝶々結び

あたしの涙が止まった頃、電話を終えた上杉先生が戻って来た。


「良兄、遅いわ〜!」


「悪いな……」


「何かあったん?」


「いや、ただの業務連絡。電話の相手が教頭だったから、無駄に話が長かったんだよ……」


上杉先生が心底嫌そうな顔をしたから、あたしと創太は同時に吹き出してしまった。


上杉先生は、この春から新しい学校でまた“先生”になる。


再会してすぐにその事を聞いた時は、本当に嬉しかった。


だって、上杉先生にはやっぱり“先生”がピッタリだと思うから…。


「お前らな〜、そんな風に笑ってられるのも今のうちだぞ?社会に出たら、俺の気持ちが嫌って程わかるよ」


嘆くように言った先生は、笑い続けるあたしと創太を交互に見てから小さく笑った。


それから上杉先生に促され、あたし達はカフェを後にした。