蝶々結び

「……ありがとう」


さっきと同じ言葉しか言えないあたしは、やっぱりちっぽけなのかもしれないけど…


『ありがとう』は、創太に伝える為の言葉だとすら思えた。


「ありがとう……」


「おう」


「っ、本当に……ありがとう……っ……!」


「もうええって」


何度も同じ言葉を繰り返すあたしに、創太が呆れたように笑った。


ずっと見ていてくれて、ありがとう……


いつも励ましてくれて、ありがとう……


あたしを好きになってくれて、本当にありがとう……


声にならなかったたくさんの『ありがとう』を、心の中で何度も唱える。


「さっきの話、良兄には絶対内緒やからな!」


声を押し殺すようにして泣いていたあたしは、そう念押ししておどけたように笑った創太に、ただただ頷く事しか出来なかった。