蝶々結び

「俺がこの世で一番尊敬してるんは、良兄や」


「え……?」


突然話が変わった事に不思議に思って小首を傾げると、創太は微笑んだまま話を続けた。


「俺、ガキの頃から良兄にめっちゃ憧れててん。だから良兄の家に遊びに行く度に、いつも良兄の後付いて行ってたわ」


昔の事を思い出したのか、創太がハハッと笑って…


その表情を見たあたしからも、ほんの少しだけ笑みが零れた。


「面倒見はええし、何やってもカッコええし、男にも女にも優しいし……。昔から、ほんまに俺の自慢の兄貴やった。だからな……」


創太はそこまで言うと、あたしに優しい笑みを向けた。


「七星が良兄の事を好きやって知った時、『あぁ、しゃあないな……』って思ってん。『相手が良兄なら納得出来る』ってな」


あたしは何も言えなくて、黙ったまま彼を見つめていた。