蝶々結び

数時間をカフェで過ごしたあたし達が店を出ようとした頃、それを止めるかのように上杉先生の携帯が鳴り出した。


「学校からだ……。ちょっと外で話して来る!」


とりあえず必要な事だけを言い残した先生は、携帯を片手に店の外に出た。


「トラブルでもあったのかな?」


「ん?大丈夫やろ」


少しだけ不安になったあたしが呟くと、創太は笑顔でしれっと言い放った。


「そうだね」


あたしは、小さく笑って頷いた。


「七星」


「何?」


「やっぱり、これだけは言うとくわ」


そう前置きをした創太が、突然真剣な表情を見せた。


その瞬間、あたし達の間にある空気が張り詰めた気がして、ドキッとしてしまった。


「正直言うとな、俺はまだ七星の事が好きやねん」


そんなあたしを余所に、創太が小さく笑った。