蝶々結び

その後は、あたしと上杉先生の事に触れられたりはしなくて…


お互いの近況報告を中心に、ずっと他愛のない話が続いた。


美容師になる為に専門学校に通う創太は、美容室でのバイトも見付けたみたい。


「まぁ見習いやし、最初は掃除とかばっかりみたいやけどな。そのうち、シャンプーくらいはやらせてくれるらしいわ」


そう話した彼の表情は、すごくキラキラしていた。


あたしは大学への進学が決まっただけで、まだ目標も夢も見付ける事が出来ていない。


だから、創太の姿勢を見習う反面、彼に負けていられないと思った。


「頑張れよ。応援してるからな!」


「おう!どうせやったら、予約なんか取られへんくらい有名な美容師になって、雑誌にもバンバン載ったるわ!」


創太はおどけたようにそう言っていたけど、その瞳は真っ直ぐに前を見据えていた。