蝶々結び

電車を降りて、通行人に訊きながら目的の場所へと急いだ。


見覚えの無い景色に、不安ばかりが大きくなる。


途中で何度も創太に電話を掛けたのに、彼は相変わらず携帯の電源を切ったままで…


「もう……」


呆れたあたしは、ため息混じりの言葉を吐いた。


その後も何度も通行人に尋ねながら歩き続け、やっとの思いでメモに書いてある住所に辿り着いた。


「ここ、だよね……?」


目の前にあるのは、白っぽくて綺麗なアパート。


住宅街なのに人通りの無い場所にある小さなアパートは、寂しげな建物に見えた。


「103……」


廊下を進んで、メモと同じ部屋の番号を探す。


「ここ……?」


創太は引っ越して来たばかりだからなのか、まだ表札が無い。


小さな不安を抱えながら、恐る恐るインターホンを押した。