蝶々結び

「まぁ祝ったるって言うのは冗談やけど、お前にどうしても渡したいもんがあるねん。だから卒業式が終わったら、絶対にそこに書いてるとこに来てくれ」


「あのねぇ……」


相変わらず呆れたままのあたしが口を開くと、創太は真剣な表情になった。


「頼む……」


理由はわからないけど、彼が必死になっている事だけは伝わって来て…


あたしは戸惑いながらも追求する事を諦め、渋々小さく頷いた。


「サンキュ♪」


創太は嬉しそうに笑った後、あたしの母に謝った。


「ほんなら、また明後日な!」


「うん……」


創太に小さく手を振り、祖父母とみっちゃんにもう一度お礼を言うと、母がアクセルを踏んだ。


夏とは違う、静かな田舎町。


どこか寂しげな風景。


何だか切なくなって、涙が零れ落ちてしまいそうだった。