蝶々結び

優子の恋には何の進展も無いまま、梅雨に入った。


あたしはこのジメジメした時期が、あまり好きじゃない。


その上、毎日のように優子の恋バナに付き合わされて、最近は憂鬱だった。


最初のうちは、上杉先生の話をする彼女の事を可愛いと思っていたけど、いい加減に聞き飽きた。


だけど…


自分(アタシ)なんかに話してくれる優子を、どうしても無下には出来ない。


「上杉先生ってね、この辺に住んでるんだって♪」


「へぇ」


優子から先生の話をされても、相槌を打つだけだった。


「七星も学校の近くに住んでるんだよね!?先生の家、知らないの?」


「え……?さぁ……」


あたしは、咄嗟にそう言ってしまった。


別に隠すつもりなんてなかったのに……


正直に答えなかったせいで、優子に後ろめたさを感じていた。