蝶々結び

離陸から1時間後…。


不安が消えたあたしと優子は、すっかり寛いでいた。


「七星、ジュース貰おうよ♪」


「うん」


元気が無いあたしでも、修学旅行の間だけは笑顔でいたいと思った。


例え、それが空元気だったとしても…。


「もうすぐ着くって♪」


優子に声を掛けられて、窓の外に視線を遣る。


すると、さっきまでは雲が真下に見えていたのに、今はエメラルドグリーンの海が広がっていた。


「綺麗……」


ポソッと呟いた瞬間、何故か胸の奥が苦しくなった。


まるで、胸をギュッと締め付けられたみたいに…。


「……七星?」


優子の声にハッとすると、彼女が心配そうにあたしの顔を覗き込んでいた。


「外、綺麗だよ!」


あたしは、優子に心配を掛けないように笑顔を向けた。