蝶々結び

「じゃあ、行ってきます」


予定よりも少しだけ早くに家を出て、ゆっくりと学校に向かった。


12月の朝は、ピリピリとした寒さが肌を刺す。


沖縄って暖かいのかな……


ぼんやりと考えていたあたしの頭に、上杉先生の笑顔が過ぎった。


先生がいない事を、まだ受け入れられない自分(アタシ)がいる。


だって、手紙はただの悪戯で、上杉先生はまだ謹慎中なだけなのかもしれない。


それで、実家に帰っているとか…。


ありもしない現実だとわかっていても、そんな事ばかり考えてしまう。


周りに心配を掛けたくないから泣かないけど、心の中では泣いている自分(アタシ)がいる。


“顔で笑って心で泣く”。


今のあたしには、きっとそんな言葉が似つかわしい。


悲劇のヒロインのつもりは無いけど、あたしの心は相変わらず空虚しか感じられなかった。