蝶々結び

「だから、違いますって……」


「誕生日には年の数だけバラの花が欲しい、とか思わねぇ?」


「思いません」


「本当に?」


上杉先生に見つめられると、胸がドキドキして戸惑ってしまう。


「今は思ってません!」


破裂寸前の心臓に気を取られていたあたしは、咄嗟にそう言ってしまった。


慌てて上杉先生を見ると、得意気な笑みを浮かべている。


「やっぱりな♪“今は”って事は、前は思ってたんだろ?」


先生の声が、すごく弾んでいる気がした。


「子供の頃の事です!」


「はいはい」


「本当に今は思ってませんから!」


「わかった、わかった」


何度も否定したけど、上杉先生は全く相手にしてくれなかった。


だけど、すごく楽しくて…


この幸せがずっと続いて欲しいと、心から願っていた。