蝶々結び

しばらく笑っていた上杉先生を横目に、くすぐったい気持ちに包まれていた。


先生は人の心を掴むのが上手いし、話し上手だから授業もわかり易くて面白い。


それが恋愛になっても上杉先生の方が何枚も上手(ウワテ)で、きっとあたしなんか足元にも及ばない。


悔しいけど、今は嬉しい。


矛盾する気持ちが、妙に心地好かった。


「お前、絶対ベタな恋愛とか好きそう!」


幸せに浸っていると、上杉先生が弾んだ声で言った。


その言葉は、間違ってはいない。


だけど…


「別にそんな事ないです……」


一応、否定してみた。


こんな時は、素直に言った方が可愛いのかな……?


そんな事を思いながら…。


「……絶対好きだよな?」


上杉先生は納得出来ないのか、誘導尋問のように同じ言葉を繰り返した。