蝶々結び

「あぁ。何度も話し合っていくうちに、リストカットもしなくなったよ」


上杉先生の言葉が、あたしの耳に優しく届く。


だけど…


「本当に……?」


不安が消えなくて、もう一度尋ねた。


「あぁ。……待たせてごめんな」


あたしの瞳に涙が溢れて、上杉先生の顔が滲んでいく。


「じゃあ……あたしはもう……二番目じゃなくてイイの……?」


震える声で訊いて、先生の瞳を真っ直ぐ見つめた。


「七星は、俺の一番だよ」


そう言った上杉先生が見せてくれた満面の笑みは、一瞬で見えなくなった。


それは、あたしが泣いていたからじゃなくて、先生があたしを優しく抱き締めてくれたから…。


空に浮かぶ三日月が、あたし達を見ている。


あたしが上杉先生の背中にそっと腕を回すと、耳元で甘い囁きが聞こえた。