上杉先生は小さく息を吐くと、ゆっくりと口を開いた。


「こんな事言うのは、教師失格だけど……。俺も須藤が好きだよ……」


「え……?」


穏やかに語られたのは、あたしの予想外の言葉だった。


上杉先生は、驚くあたしを余所に話を続けた。


「でも……俺には彼女がいるんだ……。お前も知ってるだろ?」


先生の言葉に、ゆっくりと頷く。


「俺は彼女とは別れられない……」


どうして……?


上杉先生は、あたしの心の声を察するように悲しそうに笑った。


「俺の彼女は……精神的な病気なんだ……」


「病気……?」


「あぁ、鬱病だ」


上杉先生はそう言って机に腰掛け、黒板を見つめた。


「あいつは……俺がいないと何度もリストカットを繰り返す。だから、俺はあいつから離れられない……」


その言葉を聞いたあたしの頬に、一筋の冷たい涙が伝った。