蝶々結び

何時間にも匹敵するんじゃないかと思う程、長く感じる沈黙。


だけど…


あたしは、上杉先生の答えを待っている訳じゃない。


結果なんて、わざわざ訊かなくてもわかる。


“先生”と“生徒”だと言う時点で、恋愛なんて有り得ない。


その上、上杉先生には彼女がいる。


だったら、先生の答えは『ごめん』に決まっている。


きっと、上杉先生はもうすぐあたしに言うんだ…。


申し訳なさそうな顔で、出来るだけあたしを傷付けない言葉を一生懸命探して…


だけど、最後には辛そうな表情で『ごめんな』って…。


だから、上杉先生の答えなんて聞きたくない。


黙ったままの先生に背中を向けて、小さく息を吐いた。


「困らせて……ごめんなさい……」


震える声で零した言葉が、あたしの胸を余計に締め付けた。