蝶々結び

不意にテキストを奪われ、反射的に顔を上げた。


「優子!」


優子の姿を見て、少しだけホッとした。


程なくして彼女が何か言っている事に気付いて、慌ててイヤホンを外した。


「あっ、ごめんっ……!」


あたしが謝ると、優子はいつもの優しい笑顔を見せた。


「それはあたしの台詞だよ!ごめんね、待ったでしょ?」


彼女は、申し訳なさそうに謝りながら座った。


「ううん、大丈夫……」


ふと隣を見ると、いつの間にかカップルがいなくなっていた。


携帯を開くと、優子に最後にメールを送ってから30分近く経っている。


カップルに代わって座っている家族を見て、少しだけ気分も晴れた。


「こんな難しい問題、よくわかるね……」


優子は眉を寄せながらテキストを見た後、ため息混じりにパタンと閉じた。