蝶々結び

しばらく黙っていた創太は、あたしが落ち着き始めたのを窺うようにゆっくりと話を始めた。


「七星、言いたくなかったら言わんでもええけどな……」


「ん……」


あたしは、掠れた声で言葉を返した。


「良兄と何かあったんやろ?」


「先生とは何もないよ……」


今度は、落ち着いた声でゆっくりと答えた。


「じゃあ、何があってん?」


「先生……彼女……いるんだって!もうビックリしちゃった!創太、知ってた?」


明るい声で話した後、開き直るようにハハッと笑った。


「いや……。知らんかった……」


驚いているのか、創太の声はいつもよりも少しだけ低い。


「こんな事、誰にも言えないから……つい創太に電話しちゃった……。何か、ごめんね……」


申し訳なさでいっぱいになりながら、小さな声で言った。