蝶々結び

それも、最近の事じゃない。


“良兄”と言う言葉を聞いて、夏休みの事を鮮明に思い出していた。


田舎で上杉先生と会ったあの日、あたしは確かにミラクルを感じていた。


そして、あの眩しい太陽の下であたしと先生が並んで歩いていた事も、紛れも無い事実。


だけど…


今は、上杉先生の存在がとてつもなく遠い。


ううん……


きっと最初から遠い存在の人だったのに、あたしが気付かなかっただけだね……


浮かれ過ぎてたのかな……?


いつの間にか、あたしの瞳には涙が溢れていた。


「七星、泣いてるんか?」


「ううん……」


「泣きたい時は泣いとけや!今ならブッサイクな顔になっても、見えへんからな!」


どうして……


創太はわかるのかな……


あたしが、もうとっくに泣いてた事……