蝶々結び

散々躊躇した後、思い切って電話帳を開いた。


【創太】


画面に表示された名前を確認して、ゆっくりと深呼吸をしてから通話ボタンを押した。


規則的な機械音が鳴り響いて、緊張が走る。


バイト中かもしれない……


五回目のコールまでに出なかったら、電話を切ろう……


そう決めて、コール音を数えた。


二回目……


三回目……


四……


「もしもし?」


電話の向こうで、創太の声が聞こえた。


夏休みに会ったばかりなのに、何だか妙に懐かしく感じる。


不意に創太の笑顔を思い出し、胸の奥がチクッと痛んだ。


創太の好きな人は、一応自分(アタシ)なのに……


あたしはそれをわかってて、創太に何を訊くつもり……?


浅はかな自分自身に、情けなさを感じてしまった。