蝶々結び

上杉先生は呆れたように笑うと、ゆっくりと口を開いた。


「何を見たのかは知らないけど、憶測で物を言うな。社会に出た時に、いちいち噂に振り回されてたら自分達が困るぞ!」


先生の言っている事は、間違いじゃない。


むしろ、正論だ。


だけど、それは“教師としての正論”であって、“生徒達の質問の答え”にはなっていない。


腑に落ちないあたし以外にも、納得出来ない子はいたみたいだけど…


上杉先生の言葉に壁を感じたのか、それ以上詮索する子はいなかった。


真実ははぐらかされたまま、あたし達は先生に促されて下校した。


帰り道ではため息ばかりが漏れて、足が重かった。


悲しみと、上杉先生の事になるとつい反応してしまう虚しい気持ちに挟まれて、すごく苦しい。


家に帰っても、もちろん気分が晴れる事なんて無かった。