蝶々結び

暗い空気が流れる教室に、上杉先生が入って来た。


「お前ら、まだ残ってたのか?部活がある奴以外は帰れよ!部活があるなら早く行かないと、遅刻になるぞ!」


タイミングがいいのか悪いのかわからない微妙な状況に、教室にいる生徒達は黙り込んだ。


「どうしたー?」


笑顔で尋ねた上杉先生に、一人の男子生徒がからかうような口調でこう訊いた。


「先生、彼女いるってマジ?」


「は……?」


目を見開いて声を漏らした上杉先生は、しばらく考え込むように黙っていた。


「それ、誰から聞いた?」


先生が尋ねると、その男子は田辺さんの顔をチラッと見て、言い難そうに口を開いた。


「田辺……」


「田辺……?お前、何か勘違いしてるだろ?」


「勘違い……?」


上杉先生が笑顔で言うと、田辺さんは怪訝な表情で呟いた。