蝶々結び

あたしの隣にいる優子も、暗い表情で話を聞いていた。


「先生がずっと笑顔でさ〜……。マジでテンション下がっちゃったんだよね……」


ガッカリしたように話す子に、彼女がゆっくりと近付いた。


「田辺(タナベ)さん……。それ、本当なの?」


優子が話し掛けたのは、上杉先生の話をしているグループのリーダー的存在の田辺由里(ユリ)。


学年で一番ギャルのイメージが強くて、性格も結構きつい。


恐いイメージがあるから、あたしはほとんど田辺さんと話した事が無い。


だから、彼女に話し掛けた優子の事を、思わず尊敬の眼差しで見てしまった。


「マジだって!だってさ……あたし、二人の後を尾(ツ)けちゃったもん!」


「「えっ!?」」


何人かの驚きの声が重なって、教室にいる生徒達のほとんどが優子と田辺さんを見ていた。