蝶々結び

「失礼しました……」


あたしは唇を噛み締めた後、事務的な言葉だけを残して職員室を後にした。


後ろから追い掛けて来た白田君の存在にしばらく気付かないくらい、一気に憂鬱な気持ちになっていて…


「……さん！七星さんっ！！」


白田君に肩を掴まれて、やっと彼の存在を思い出した。


「あっ……！ごめん、何だっけ？」


あたしが慌てて反応すると、白田君は苦笑しながら口を開いた。


「飯、何がイイっスか？」


「ご飯……？」


「そっ♪腹減りません？食いに行きましょ♪」


笑顔を見せた白田君を前に、躊躇していた。


男の子とご飯を食べに行くなんて、気まずくなるに決まっている。


そんな経験が無いあたしには、“男の子と二人きりでご飯を食べる”と言う行為が、何だかすごく恥ずかしい事のように思えた。