蝶々結び

気が付くと、あたしの向かい側に座っていた上杉先生が、教科書と問題集を並べて睨めっこをしていた。


「何してるんですか?」


あたしが尋ねると、先生は真面目な顔で口を開いた。


「遊んでると思うか?」


「いえ……。思いませんけど……」


何か不機嫌……?


そう感じて、上杉先生に声を掛けた事を少しだけ後悔した。


「一応、仕事……」


先生は普通に答えて、また教科書と問題集に視線を戻した。


「職員室でやればイイんじゃないですか……?」


あたしの言葉で、上杉先生が手を止めて顔を上げた。


「職員室にいたら、他の雑用ばっかりさせられるんだよ!ここならゆっくり出来るから、落ち着くし……」


嫌そうな表情の先生は、最後の言葉を濁すと、あたしをチラッと見て苦笑した。


あぁ……


あたしの為か……