蝶々結び

「まだ残ってたのか……」


生徒会室に入って来た上杉先生は、あたしを見て目を見開いた。


「先生……」


書類に目を通していたあたしは、小さく苦笑した。


「どうした?」


「まだ書類のチェックが終わらなくて……」


「皆は?」


「自分のクラスの準備を手伝って、たぶんそのまま帰ったんだと思います……」


また書類に視線を戻すと、上杉先生の手が伸びて来た。


「手伝ってやるから、半分貸してみろ」


「でも……これは一応、あたしが確認しないと……」


戸惑いながらも首を横に振って、書類に印鑑を押した。


「俺、副顧問なんだけど……」


「わかってます。でもこれは、生徒会長の仕事なんで……」


上杉先生の気持ちはすごく嬉しいけど、自分の仕事を他の人に託すのは気が引けて、申し訳なく思いながら断った。