蝶々結び

無言のあたしを見ていた上杉先生は、しばらくして頭を掻きながら苦笑した。


「もしかして……俺、外した?」


恥ずかしそうな先生を見て、クスッと笑ってしまった。


「そんな事ないですよ?」


「今、笑ったじゃん!」


「笑いましたけど?」


あたしはわざとそう言って、ニコッと笑った。


「お前、言うな〜!何だよ〜!俺は真剣に言ったのに!」


「だからです!」


「何が?」


「先生がイイ事を言ってくれたから、あたしは自然に笑えたんですよ!」


「俺、先生っぽかった?」


ニッと笑った上杉先生が、妙に可笑しい。


「先生は先生ですよ!」


笑顔で答えたあたしは、悩んでいる事なんてすっかり忘れて、先生と普通に会話をしていた。


こんな普通のやり取りが、すごく楽しかった。