蝶々結び

「上杉先生っ……!?」


視線の先には、自転車に乗った上杉先生がいた。


「よっ!」


「何してるんですか?」


「サイクリング」


「こんな田舎で?」


「こんな田舎だからだよ!他にする事ねぇし」


上杉先生は公園の中に入って来ると、サンダルを拾ってくれた。


「あっ、すみません……」


「ほら!」


「ありがとうございます」


あたしはお礼を言って、サンダルを履いた。


「何もする事ねぇから出て来たけど、この辺の道はあんまりわかんねぇし……」


「でも、ここは本当に何もないですよ?」


「マジでそれだよな〜!ひたすらチャリ漕ぎまくったのに、結局道ばっかりだったっつーの!」


「お疲れ様でした」


あたしの言葉に眉をしかめた上杉先生が可笑しくて、思わず吹き出してしまった。