蝶々結び

しばらくの間、ブランコを漕ぎ続けた。


風を切って前と後ろに動くこの感覚が、昔から好きだった。


よくブランコを漕ぎながら、誰が一番遠くまで靴を飛ばせるか競ったな……


運動が苦手なあたしは、ブランコを漕ぐのも下手だったから、創太によくバカにされていた。


それが悔しくて、必死に練習してたっけ……


流れる景色を見ながら、色々な事を思い出していた。


「ちょっとやってみようかな……」


あたしはポツリと呟いた後、力いっぱい地面を蹴って思い切りブランコを漕いだ。


そして、足の指の力を抜いてサンダルを少しだけ脱ぎ、そのまま正面に飛ばした。


ヒュッと言う軽快な音とともにサンダルが宙に舞い、見事な弧を描きながら飛んだ。


「やるじゃん!」


あたしのサンダルが地面に落ちた瞬間、聞き覚えのある声がした。