蝶々結び

「お邪魔しまーす」


あたしは明るく言って、家の中に入った。


だけど…


その直後、みっちゃんの家に来た事を後悔した。


居間には、課題に煮詰まった創太が寝転んでいたから…。


「七星、どうしたん?」


彼はまるで昨日の事なんて無かったかのように、至って普通に話し掛けて来た。


「えっと、数学がわからなくて……。先生に教えて貰うの……」


戸惑いながらも小さく答えて、創太から離れた所に座った。


「あっ!良兄、逃げたやろ!?お陰で全然進まんかったわ!俺は勉強は嫌いやねんって!」


創太は上杉先生の顔を見ながら、ガバッと起き上がった。


「俺だって勉強なんか嫌いだし、夏休みまで補習みたいな事はごめんだっつーの!そもそもお前の場合、授業聞いてねぇだろ?」


上杉先生は、眉をしかめながら言い返した。