蝶々結び

「ほら、大丈夫か?」


だけど、予想に反して、創太はあたしの前に手を差し出した。


あたしの知っている意地悪な彼じゃない事に、戸惑ってしまう。


「ほら!」


創太は黙ったままのあたしの手を、グッと引っ張った。


あたしの体は軽々と起こされ、何とも言えない複雑な気持ちのまま口を開いた。


「ありがと……」


「ん。これ、抜くんか?」


創太は笑顔を見せると、さっきの大根を指差しながら訊いた。


「うん……」


「りょーかい♪……よっ♪」


あたしの力ではビクともしなかった大根は、創太によってあっという間に引き抜かれた。


「ん♪」


「あっ、うん……。ありがと……」


昨年までの意地悪が嘘のように、創太は優しくなっていた。


あたしは、戸惑いながらも畑仕事を続けた。