蝶々結び

ホッとしながら、祖父母に続いて歩く母の後ろをゆっくりと付いて行った。


農作物の間にある狭い道を、転ばないように進む。


「暑……」


都会みたいな気怠い暑さじゃないけど、真夏の田舎も充分暑い。


周りに陽除(ヒヨ)けが無い畑は、直接陽射しが当たってきつい。


「七星、帽子は?」


「持って来てない……」


正式には、帽子なんか一つも持っていないんだけど…。


「暑さで倒れるよ!」


「そう言われても……」


祖母の麦藁帽を被った母は、あたしの顔を見ながら呆れた表情をした。


「無理しないでよ!」


「はーい……」


既に暑さにやられているあたしは、やる気の無い返事をした。


「七星、夕飯の野菜採ってくれへんかー?」


一番前を歩く祖父が、振り返って叫んだ。