先生と暮らしたいと願う娘さんのことを思うと、私は素直に先生からの愛を受け止めることができなくなった。
身を引く、なんてかっこいいものじゃないんだけど、私は先生に別れを切り出した。
先生に別れを告げたあの夜。
まさか、こんな幸せな未来が来るなんて思っていなかった。
「直が奥さんかぁ」
先生は、自分の左手の薬指の指輪を見つめて、その手で私の左手を握る。
「先生が旦那さんなんだね」
先生の指輪と私の指輪が寄り添う。
私は窓の外の景色を見ながら、先生の手の温もりを感じていた。
「直、何見てんの?」
突然頬にキスをされた。

