こんな風に泣くことは一生ないと思っていた。
子供のように大きな声で泣いた。
何が悲しいのか
何が辛いのかよくわからない。
ただ泣くことしかできなかった。
情けない自分に対しての涙なのかも知れない。
「おい!!直!!大丈夫か?」
雨音の中に、自転車のブレーキ音が混ざる。
自転車を放り出して、先生が私に向かって走ってくる。
自転車が倒れる音は、雨のせいで聞こえない。
「ごめん……なさ……」
謝る私の体を優しく包み込む先生。
濡れているけど、雨じゃなく汗。
先生の汗。
私を雨から守るように、抱きしめてくれる。