ちゃんと靴を履いて歩いているのに、自分が宙に浮いているようだった。



ふわふわしていて、夢の中にいるみたい。




思い出したくないのに、さっきの留守電の声がどんどん大きくなって、耳の奥で響いていた。



その声はどんどん種類が増えていき、本当に言っていたのかどうかわからないセリフまで加わっていた。



妙に落ち着いている自分がいて、先生に見つけてもらえなかったら私はこのままどこへ行くんだろうって考えたりした。



自分が透明人間になって、誰にも見えないんじゃないかと思った。


それくらい、誰も私を見なかった。


私が泣いていることすら、気付かれない。




曲がり角に来るたびに、私は迷うことなく曲がった。


誰かに導かれるように、自然に選ぶことができた。